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年々農場を大きくしないという考え方・ブーゴー農場(6月14日)



6月15日、タルン県(TARN)にあるやぎのチーズ農場を運営するブーゴーさんの町、ピュイローラン(Puylaurens)に着きました。昨年に続き今年もやってきました。チーズマーケットで扱うやぎのチーズで最もよく売れています。その理由が今回の取材でまた一つ明らかになりました。

去年とほぼ同じ数のやぎが元気に餌を食べていました。食べた後は、畜舎の外に出て運動するといいミルクになるそうです。しゃがんでえさをやっている美奈子店長。

昨年は、280頭のやぎを飼っていらっしゃいました。ということは今年は300頭を超えるやぎの数になり、経営的にも少し楽になるのでは? と私もうれしくなり、ブーゴーさんに今年は何頭になったのかを早速伺いました。ところが、生まれたやぎは全て売ったということでした。今年も合計280頭ほどで今後もこの数は変わらないというのです。一体、どういうことなのでしょうか?

ヴィクトワさんとシンディーさん、そして農業学校から実習に来ていたマリーさんがチーズ工場にいました。

農場で働く人間の数も昨年と同じです。スタッフも3人のままです。ブーゴーさんと奥さんのヴィヴィアンで合計5人。普通の人なら同じ耕地面積でたくさんの野菜を作ったり、たくさんのミルクを得られるようにと考えます。しかし、ブーゴーさんは違うのです。今の規模がちょうどいいと言うのです。これ以上になれば、愛情を注げなくなるやぎが出てしまい、自分も幸せに成れないというのです。フランスでは、年々農家の数が減っているそうです。それは、農業を継ぐ人がいない・廃業というより、金銭による合併や吸収などによって、大規模農家が増えているのです。しかし、ブーゴーさんはそれは愚かなことだと心を痛めています。確かに農場を経営して行く上では、大規模は、コスト削減になり、価格的に競争力のあるチーズや野菜などを作りやすくなります。しかし、せっかく動物が好きでこの仕事を始めたのに、大規模にして会社経営を仕事にしてしまえば、やぎと触れ合う機会が減り、楽しくないというのです。また、生産できるチーズの量が増えても、同じ作付面積の牧草地では、増えたやぎのえさは賄えないので、これまでは使っていなかった出所不明の配合飼料などを買い与えざるを得なくなるというのです。畜舎も混み合い住環境も悪化、当然チーズの味も下がるといいます。

ブーゴー農場に近いレストランでは、ブーゴーさんのクロタンを使ったサラダのメニューがありました。

ブーゴーさんのやぎのチーズが、これからもずっと美味しいままなのは、彼のこうした哲学が根底にあるからだと思いました。一から農場を始めた頃は、何も分からず協同組合で言われたチーズをただ作っていたそうです。それから徐々に勉強をしながら、自分達で作りたい味のチーズを一つ一つ形にしていったそうです。チーズに貼るラベルも独自でデザインをして、一人立ちできるようになっていったそうです。また、パリのランジス市場やトゥールーズの大市場への出荷が大半を占めていたのですが、その他に地元のレストランなどに直接納品していくようにもなったそうです。直取引が増えたことで、売り手のブーゴーさんも利益が少し増えて、毎年同じチーズの生産量でも、経営的には向上しているそうです。絶えず努力を続け、一体何が自分にとって最も大切な事なのかをきちんと考えているブーゴーさんに、大きな刺激を受けて日本に帰ってきました。明るくエネルギーが溢れてこぼれそうな素晴らしい49才のフランス人でした。私達チーズマーケットも個人経営のこの規模で楽しく仕事を続けて行くことが、お客さんにとっても一番いいことだと再認識しました。これからもがんばります。


年々農場を大きくしないという考え方・ブーゴー農場(6月14日)