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標高1,100mの高地でチーズを作り始めたアントワーヌさん。Le Perrier,63600 Valcivieres(2008年8月、オーヴェルニュ地方)



8月12(火)の朝9時前にSt.Anthemeのホテルを出ました。目指すは、標高千m以上にある小さな農家です。美奈子店長が、札幌にいる時にネットで調べてくれていました。
 
今回の訪問も予約なしでした。Ambertから狭い山道を気をつけて運転してようやく着きました。着いてすぐに吠える番犬に近づいて撫でていると、アントワーヌさんが家から出てきました。この古い家を一年前に買って改装して住んでいるそうです。チーズ作りは、ようやく一年と一か月が過ぎたようです。フルムダンベールに似た青カビチーズとトム・ド・サヴォアに似たハードチーズを作っているそうです。


今日は、トムを作るそうです。チーズ作りの工程を見せてもらいました。その後で実際に牛を放牧している場所に連れて行ってもらえることになりました。まず、アントワーヌさんの車で5分ほど更に山の奥に入ります。その先は、車で行けない場所です。そうです、道がないのです。山から流れ出る小さな川が我々の前を横切ります。この川の水を牛は飲んでいるそうです。(ドラム缶を半分に切った物に溜めた水を飲むのではありません。)歩くこと10分、とうとう搾乳をする小さなプレハブ製の建物がある所に着きました。牛が2頭ずつ入って搾乳をするようです。牛たちがここにやってくるのは、乾燥したトウモロコシがお目当ての様です。搾乳して欲しくてくるのではないそうです。朝は7時、夜は6時から搾乳をするそうです。搾乳は電動のポンプで行いますが、電線は、ここまで来ていません。ガソリンエンジンを使った発電機で賄っているそうです。

放牧地にある簡易搾乳場。7月から9月まではずっとここで放牧を行い、人間が搾乳しにここまでやってくるのです。大変な労力だと思います。

上の写真の右側に広がる風景が下の写真です。私達はさらに坂を登りました。時折、牛のベルが鳴る音が聞こえてきます。牛は近くに居そうな気配がしてきます。そして、この坂を登って左側に広がる牧草地を見ると・・・・・。

この坂道も牛が行き来しています。地面に目をやれば、あちこちに牛のうんこが見えます。

いました。いました。牛が合計で14頭ほどいます。そのうち5頭は妊娠中のようで、手前側の平坦な場所に座っていました。それ以外の牛は、とても活発に動いていて、奥の急な坂の方まで草を食べに行っています。

道路も無いので、風が草を揺らす音とカウベルの音しか聞こえません。

弟のルイスさんが、一頭の牛に声を掛けています。この牛は9月中旬に出産するそうです。撫でてもらい満足そうです。ルイスさんが言っていました。「こうして自然に近い状態で飼育すると、ストレスもなくてのんびり暮らせるから、いいミルクを出してくれるんだ。」と。

ルイスさんは、この地域でもう5年以上こういう仕事をしているそうです。牛はルイスさんにとてもなついています。

この兄弟は、とてもとても素晴らしいと思いました。例えば搾乳をしたあとの重いミルク缶を道路がある場所まで引っぱって運ばなくてはなりません。その道のりは相当あります。一度や二度の往復なら私でも出来ますが、7月から9月までの毎日、それも朝と夕の2回も運ぶのです。そして、そのミルクでチーズを作り、お客さんが買いに来れば販売もして、マルシェにもチーズを売りに行ったり・・・。理想を持っている人は世の中にたくさんいますが、実際にその理想のために労力を惜しまないで理想に向かっている人は少ないと思います。今年の12月のごちそうは、アントワーヌさんのフルムにしたいと思います。本当に良い出会いが出来ました。


標高1,100mの高地でチーズを作り始めたアントワーヌさん。Le Perrier,63600 Valcivieres(2008年8月、オーヴェルニュ地方)