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優秀な卒業生ほど名前も知らない企業に入り、自分の人生を切り開く。(千本 倖生)

「優秀な卒業生ほど名前も知らない企業に入り、自分の人生を切り開く。リスクをとって大企業と競争する人間こそ尊敬されるんだ。」


2月23日(金)、イタリアから東京に向かう飛行機の中で朝日新聞にあったこの記事を読みました。自然とぽとぽと涙が落ちてきて、新聞が破れそうになりました。こんな素晴らしい人が日本人でいるんだと思うと大きな勇気が沸いてきました。
 
ADSLの大手、イーアクセスの会長である千本倖生さんは、64歳にして3度目の大きな挑戦を始めようとしています。この3月から「日本の携帯電話をもっと通信速度を上げてなお且つ料金を安くしたい」という思いで新たな事業が動き出します。これだけなら、「ほほー、頑張るねぇ。」で話が終わるのですが、千本さんがすごいところは、別のところにありました。彼は、日本電信電話公社(現NTT)という日本で唯一最大の安定した電話会社で18年間も勤めていたのに、その職を自ら辞して次々と通信ビジネス業界で企業を立ち上げて成功を収めてきました。しかし、公社の時にはほとんどの上司や同僚が彼が辞めることに反対しました。「あと20年も我慢すれば、多額の年金も付くし、役員にだって成れるんだから・・。」という理由で引き止めたといいます。しかし、千本さんはこうした声にも耳を貸さず、自分で自らの道を切り開いていったのです。このような突き進む原動力となったのが、彼が20代の時に耳にしたこの言葉だったそうです。
 
創業をすること、そしてそれを軌道に乗せることはとても大きなエネルギーを必要とします。まして日本のように既得権を保護するかの様にあらゆる業界で新規参入を困難にしている社会体制の中では、千本さん達への風当たりは強く、相当な軋轢や衝突があったことと思われます。こうした数多くの障害を乗り越えて見事に通信業界で競争原理を作り出した千本さんの功績は素晴らしいと思います。例えば私が子供の頃は今のNTTしかなくて、電話代はともて高いものでした。しかし、千本さん達が今のKDDIを創り、企業間で競争が生まれた結果、東京と大阪間の電話料金が400円(3分)だったのが、今ではたった8円になったというのです。次にイーアクセスという会社を創業して、インターネット料金も同様に安くしていったそうです。安いだけではなくて、通信速度も格段に速いサービスにしていったというのです。そして、今度の挑戦で、今も高い料金が続く携帯電話の事業に同様の革命をもたらすべくソフトバンク社と同時に携帯電話事業への許認可を受けて参入したのです。今後の千本さんの動きに注目したいと思います。
 
千本さんには忘れられない出来事がありました。電電公社に勤めていた20代の頃に経験したアメリカ留学の時の話です。その当時学生寮で同室になった紳士的な白人青年から汚いスラングで「くそ野郎」と言われたことでした。この青年から「日本でどんな仕事をしているか?」と訪ねられた時に、千本さんは自慢そうに、「日本で唯一最大の電話会社で独占企業の電電公社で働いている!」と答えると、「くそ野郎」と吐き捨てるように言われたのでした。NTTに勤めていて何が悪いのか?その時には分からなかったといいます。でも、半年ほど経って千本さんは気が付いたそうです。アメリカ社会では、「優秀な卒業生ほど名前も知らない企業に入り、自分の人生を切り開く。リスクをとって大企業と競争する人間こそ尊敬されるんだ。」ということを知ったそうです。こうしたアメリカの価値観の一つを知った時、彼の心が大きく起業という方向に向かうことになったのでした。
 
この話を聞いて、私は少しアメリカのことを見直しました。こういうチャレンジ精神はともて素晴らしいことです。少なくともアメリカでは、日本より多様化した価値観が存在していて学生の進路も画一化しておらず、人それぞれで違うことを良しとする社会なのだと思います。その中でも優秀な学生こそが、既存のレールに乗るのではなくて、自らが新しいレールを敷こうとするのでしょう。そしてそういう人を高く評価する社会なのだと感じました。優れた能力を備えた人は極僅かな人数です。そうした人の多くが、もっと目線が高いといいますか一般人には考えもつかない様な高い理想と使命を併せ持ち、未知なる事に挑戦しようとしているのです。と同時にそれを受け入れるアメリカの社会がとても素晴らしいと思いました。アメリカの自由主義社会が全て良いとは私は思っていません。ですが、少なくともやる気や才能ある人が、アメリカでは挑戦しやすい環境が整っているのだろうと思います。逆に日本では官僚の力が強く、あらゆる面で国や地方行政による規制や締め付けが厳しく、多くの業界がいまだに風通しが悪く硬直化しています。その為、独創的なアイデアや実行力があっても、なかなか実を結んでいかないのだと思います。だからやる気を持った人もこの現実を見て萎んでしまったり、過去に成功事例が少ない日本では、挑戦を勧める大人も少ないのだと思います。そんな日本にあってすら、自分がやるべきことには何なのか?と自己に問いながら高い使命感を持ち続け、それに向かって突き進んでいった千本さんの心意気に心を打たれました。札幌にもイーアクセスが進出したら、千本さんの携帯電話を使わせてもらおうと思います。
 
「高い使命感を持って挑戦者になる!」これは若者だけに当てはまる事ではなくて、むしろ挑戦することを恐れたり、理由をつけて逃げている我々中年世代を含めた全ての年代の人に向けられた命題かもしれません。こうした挑戦する人が増えることで、より豊かな社会が形成されるのだと思います。


優秀な卒業生ほど名前も知らない企業に入り、自分の人生を切り開く。(千本 倖生)