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10年間食べなかった大嫌いなムール貝をおいしく食べました。



チーズマーケットを創めてからの私の人生は大きく変わりました。それは何といいましても食生活が以前とは大きく変わったことです。その一つが嫌いな食べ物がとても減ったことです。私は日本である店のパエリアを食べた時、中に入っていたムール貝が生臭い割りには、味がしなかったのを強烈に記憶していました。それ以来、二度と食べることはありませんでした。

ムール貝、この量で前菜です。

でも、今回ノルマンディーにチーズの取材に来て、海に面しているこの地域では、新鮮な海の幸が豊かであることを知り、ムール貝も日常的に食べられていることが分かり、食べようと心が動いたのでした。でも、上の写真のようにお皿いっぱいのムール貝。全部食べられるのかなぁと一瞬思いました。でも、結局全てを食べてしまいました。あの日本で食べたムール貝とは全然違います。まず、貝の持つうまみがあります。磯の香りとシードルで蒸したような香りが重なり、程よい塩味がより貝のうまさを引き立てていて、一皿が終わるまで食欲をそそりました。もともと、つぶ貝や帆立など貝類はととても好きでした。でもあのムール貝は食べられなかったのです。

色も味も香りもいいムール貝。

では、どうして10年も避けていた食べ物を食べたのかと申しますと、やはりチーズマーケットを創めてから、食品に対する考え方が徐々に変化したことが原因です。チーズマーケットをやらなければ、このような気持ちの変化は起きなかったと思います。どういうことかと申しますと、例えばチーズでもどのように運ばれてきたのかやどのように管理されてきたかのかで、同じチーズであっても味が全然違うことがこの仕事を通して分かったのです。一口にカマンベールチーズと言いましても、誰がどんなミルクで、どのように作るかで味が全く違うのです。まして、それを日本で食べるとなると、誰が輸入してどのような温度管理や湿度管理をするかで、またどのようにまたどのタイミングで包むのかでも違ってきます。つまり、美味しくなるかどうかの色々な分かれ道があって、そのチーズがどの道をこれまでに通ってきたのかで、それぞれのカマンベールの味が全く違ってくるのです。こういう理由で、以前私が食べたあの美味しくなかったムール貝が、「今、世界中で食べられているムール貝の代表ではない。」と分かったのです。そして、たった一度だけ美味しくなかった貝があったからといって、その食べ物をこれからもずっと絶つのは、愚かな事だと思ったのでした。以前私が食べたムール貝が美味しくなかったのは、最初は美味しかったものが、例えば冷凍で輸入されて、解凍時にうまみが逃げたのが原因なのかもしれません。こうした食品の「食べるまでのいろいろなプロセス」を考えられるようになり、美味しくなかったからといって、一度切りでさよならするのはもったいないと思ったのでした。

めん鳥をシードルで煮込んだお料理。デザートはプリンです。この3品で16ユーロでした。(モンサンミッシェルの近くのレストランにて。)

この話のように、もしもあなたがあるチーズに対して、マイナスのイメージがあるとしても、是非もう一度日本で良い店を探して、あるいはフランスで信頼できる店を探して、そのチーズと同じチーズを食べてみて欲しいと思います。常に美味しくしようと思っている人は必ずあなたの近くに数人はいると思います。


10年間食べなかった大嫌いなムール貝をおいしく食べました。