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美味しいオリーブオイルの故郷、カストロノーヴォ・ディ・シチリアに着きました。



ついに、やってきました。美味しいオリーブオイルの故郷、カストロノーヴォ・ディ・シチリア。場所は、パレルモとアグリジェントの中間ぐらいにある山間の小さな村です。村の大きさを説明するには、ガソリンスタンドが一つしかないといえば、大体の想像がつくかと思います。昨年に引き続き2度目の訪問で、今回は3泊4日と余裕の滞在となりました。出来ることなら毎年行ってみたいと思うほどとても素晴らしい処なのです。

コッレ・サン・ヴィターレの会社社長のアントニーノさん(中央)とメンバーの一人、ベルナルドさん。

何が言いかと申しますと、この村で暮らす人々が生き生きとしていることです。日本の社会が忘れてしまった地域社会の力が健在なことです。どこの子供のことも全ての大人が知っていて、村全体で育てているような力があるのです。老人も尊敬されている社会なのです。そして、その社会の力の元になるのが豊かな食生活だと思います。ここシチリア島では、10月でも桃が収穫できるなど、一年を通していろいろな農作物が何度も採れます。野菜や果物はもちろん、ぐるりと山に囲まれたこの村ならではの木の実やきのこ、エスカルゴなども採れるのです。一番上の写真の左端のベルナルドの奥さんによると、「食料品店で買うものといえば、魚や小麦粉ぐらいで、あとは全て自分達の農業組織で賄えるのよ。」とおっしゃっていました。つまり、食べ物はほぼ自給自足ができているというのです。またどの食べ物も自分達で作る有機栽培なので、安全で買う物よりも飛びぬけて美味しいのです。現代で、しかもイタリアの様な先進国にあって、自給自足ができている地方があるというのは素晴らしいことだと思いました。夕食に招かれた2軒のお宅で振舞われた食事の中にもそれが現れていました。ワインやチーズ、オリーブオイル、ジャガイモ、豚肉とうさぎの肉、トマト、ヒノッキオ、ローズマリーなどのハーブ類の全て。ドルチェに入っていたアーモンドや無花果。ジュースとして出てきたレモンやオレンジ。そしてフルーツとして出されたブドウや柿、白桃など。その全てが、この村と周辺の町で作られたものだというのです。宴は夜8時過ぎから始まり、終わったのは11時をまわっていました。しかし、オリーブオイルはもちろんどれを食べても美味しく、時間が足りないくらいでした。全てが手作りの愛情あるお料理でした。

川あり山あり里あり。ほんの少し前の日本にもあった田舎がここには残っています。

さて、オリーブオイルの会社の話をします。上の写真は、会社のある丘から南側を見下ろしたものです。こんもりと丸い木は全てオリーブの木です。10戸ほどの農家が持つオリーブ畑のオリーブを全てこの会社でまとめてオイルにしたり、ボトル詰めやラベル貼りを行っています。その組織の代表のアントニーノさんは弱冠38才ですが、彼のパートナーの農家の人たちは彼よりも20歳以上も年上の人たちばかりです。しかし、とても上手に先輩の農家の方たちをまとめています。また、農家の方達も彼を強く信頼していることが分かりました。新しい組織(共同会社)を作ることで、それまで各農家でばらばらだった品質が、徐々に高められ、品質が揃ってくるようになったのだそうです。栽培方法やオリーブハエの対策など、オリーブを育てる段階からその指導にも力を入れているそうです。そうした努力のお陰で、数年前からは、オリーブオイルマスター協会の「HS;ハイスタンダード」の認証が取れるまでになったそうです。「高品質が、全ての問題を解決する。」とおっしゃった彼の言葉が印象的でした。

斜面に沿ってオリーブの木が整然と並んで立っています。この右には古代の洞窟があります。


私達日本人は、お金はあるかもしれませんが、そのお金で買える食べ物の質や安全性といったら、この村のどれよりも劣っていると感じ唖然としました。そして、日本の政治や農業問題など、いろいろなことを考えさせられました。人口に比べ国土が狭い私達日本人は、食料を輸入に頼らならないのは仕方の無いことです。しかし、その多くは食べる人のことをちっとも考えていないようなひどい物です。チーズマーケットで大きなことは出来ませんが、少しでもこうした農家の人たちが作った農産物を紹介していきたいと思います。そして、多くの人にシチリア島を訪れることをお勧めします。一日でもこの村に立ち寄り、美味しい空気と綺麗な景色の中で、愛情のこもったお料理を食べたならば、日本のどんな高いお値段のレストランでも決して味わえない素晴らしく豊かで幸せな気持ちになると思います。


美味しいオリーブオイルの故郷、カストロノーヴォ・ディ・シチリアに着きました。