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やぎの硬いチーズも美味しい! 農家のマリーさんを訪ねました。2007年8月



8月11日(土)(2007)の午後、Lourdios−Ichere村から車でもう一軒の農家を訪ねました。ここではやぎの硬いチーズを作っています。訪問することは、事前には連絡をしていませんでした。4年ぐらい前から常にランジス市場の人を通して私達が訪問したい事を先方に伝えていたのですが、ここ1年前ぐらいからは、自分達の旅の力が付いてきたのか、自分で車を運転しては直接現地に向かうようになり、聞きたい事もフランス語で事前に調べるようにする様にして、より日程的にも楽になりました。お陰でチーズに関することも取材を通して随分と分かるようになってきました。
 
さて、チーズのラベルを手掛かりに地図でAydius村まで走り、村に着いてからは、農家の看板を見つけて、さらに進みます。今回の場合、やぎの畜舎が下の写真のように道路脇からすぐに見えたので、「ここだ!」とピンと来ました。まず私が先に車から降りて、家の人に会いに行きました。

山の斜面を削って作った土地に建てたような畜舎です。7月からその脇に自宅を作っているそうで、これで仕事と子育てがし易くなったそうです。

マリーさんと旦那さん、そしてマリーさんの甥っ子のご夫婦の計4人が居ました。そして、下の写真の手前側には、3歳ぐらいの女の子がビニール製の小さなプールに浸かって遊んでいました。

マリーさんと美奈子店長。旦那さんは、この建物の屋根で工事をしていました。10年前に独立したそうです。

しばらくするとお兄ちゃんがやってきました。日本人を見るのは初めてなのか私達に興味があるようで、奥さんと施設を見て回る時に、最後まで一緒に付いてきました。それにしてもこうして親の働く姿を身近に見ながら育っていくのは、本当に良いことだと思いました。

3歳になるお嬢ちゃんは、おかあさんとおにいちゃんといっしょに遊べて本当に幸せそうな顔でした。


夕方6時過ぎになって、餌をやる時間になりました。おいしいそうな香りがするのかどのやぎも柵にかぶりついて待っています。自分の背よりも高くて大きなやぎにも恐れることなく、あの小さな女の子もお母さんのお手伝いの真似事をしています。
 
以前は、この畜舎のあるチーズ工房には自宅から車で通っていたそうです。その為に子育てと仕事の両立がとても難しかったとおっしゃっていました。その為にこの7月から増設工事をして、家を畜舎の脇に作ったそうです。お陰で今ではこうして仕事と子育てをうまくこなせるようになったそうです。自営業は、子供を育て上でも本当にいい仕事ですね!

このお嬢ちゃんも大きくなったら、やぎの世話をするのが好きになるといいなぁ。

こうした様子を見て、どんなチーズなのかは大体分かりました。でもマリーさんが食べて行きなさいと勧めてくれるので、やぎのチーズを食べてみました。うーん、これはおいしいです。木曜日にこのチーズを追加で仕入れて本当に良かったと思いました。日本に皆さんにも胸を張って紹介しますと言うとマリーさんは笑っていました。

長生きはするものです。このままやぎのハードチーズはおいしくないなんて、勝手に決めつけて死ななくて良かったです。

私が10年ほど前にこのチーズの輸入の仕事を始めた時には、大手のやぎのチーズのメーカー製だけを輸入していました。しかし、今ではとても食べられないほど、それらはおいしくないチーズでした。値段は安くてその当時は、それなりに売れたのですが、結局は長続きしませんでした。しかし、どうしてこうも美味しくないのか?という理由が、その当時の私には分かりませんでした。しかし、こうしてこの5、6年ほど継続していろいろなチーズの製造現場を見てからは、その理由が分かってきました。美味しくない一番の理由は、ミルクの品質が悪いからです。ミルクが美味しくないのは、牛に与える餌が良くなかったり、やぎの育て方や暮らしている場所に問題があるのです。また、何と言ってもいろいろな広い地域の農家のミルクを遠く離れた工場までタンクローリー車で時間をかけて運んだ末に、それら大量のミルクを全部混ぜてしまうので、味が落ちているのだと思います。また、そのミルクをチーズにする前に高温で徹底的に殺菌することもミルク本来のおいしさを失わせている原因だと思います。
 
一方、ブーゴーさんやマリーさんなどの農家が作るチーズが美味しい理由は、先の大手メーカーとは全く逆の事を実行しているからだと思います。恥ずかしながら、「やぎの硬いチーズといえば、美味しくない。」という方程式が脳裏にありました。10年前のあの悪い印象が心の中に深く刻み込まれていて、新たなやぎの硬いチーズの輸入には長い間二の足を踏んでいました。でも、今回幸いにもこうしてランジス市場からマリーさんのような素晴らしい農家の方のチーズと出会うことが出来て、ようやくあの悪夢から抜け出すことが出来ました。「やぎの硬いチーズも本当においしい。」と心から言える自分に変わって本当に嬉しいです。帰国後に店頭販売の時にお客さんに試食をしてもらおうと思っています。10年前の私のように、「やぎのチーズは美味しくない。」と思い込んでいる人たちにもこの味を知ってもらえれば嬉しいです。

やぎの硬いチーズも美味しい! 農家のマリーさんを訪ねました。2007年8月