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パルミジャーノレッジャーノになれなかったチーズの保管棚



5回目の今日は、各チーズ工場での品質の格差についてのお話です。「パルミジャーノレッジャーノを作ることが認められた工場なら、どこでも同じ成果を得られている。」・・・そんなことはありません。実際にはそれぞれの工場毎にいかに大きな差が出ているのかという実態をいろいろな写真を添えてお伝えしたいと思います。


それでは、ここで問題です。下の2つの写真は、パルミジャーノレッジャーノの熟成庫です。さて、良質なチーズを生産していると思われるのは、右と左のどちらでしょうか?

チーズマーケットが認める高品質のパルミジャーノレッジャーノの熟成庫です。パルミジャーノレッジャーノに成れなかった悲しみが漂う熟成庫。えぐられてデコボコにされてかわいそう。私もつらいです。





正解は、左です。色や艶、そしてどれも整った大きさ。どれをとっても左の熟成庫の方が優れていると思われます。左が、チーズマーケットが輸入する素晴らしいパルミジャーノレッジャーノの工場です。この4月(2005年)に、七年振りにモデナにあるこのチーズ工場を訪問しました。朝から晩までたった2人の職人さんだけで、一日たった6個のパルミジャーノレッジャーノを作る工場です。その2日後に、パルマにある右の写真のパルミジャーノレッジャーノの工場も取材することが出来ました。一つの工場だけなら分からなかった事も、2つの工場を同時に見ることで、細部にわたり比較することが出来て、多くの発見をすることができました。このことは、2月(2005年)のフランスのモンドールの工場の取材経験でも感じたことでした。「常に良いもの、美しいものを見ることは大切。でもいいものばかりではなく、時には問題がありそうな大規模なチーズ工場を見ることも勉強になる。」と感じました。共に厳しいパルミジャーノレッジャーノの規則の下で製造する2つのチーズ工場。なのにこれほどの差が出るなんて、両者で何が原因なのか? 今回の取材でそれが分かりました。そこで今回は、この低品質のパルミジャーノレッジャーノのチーズ工場の様子を見て回りたいと思います。



表面を鋭利なナイフで削り取られたパルミジャーノレッジャーノ。見渡す限り不良品のチーズ。これはパルミジャーノレッジャーノと呼べません。



上の写真をご覧下さい。私達チーズマーケットもパルミジャーノレッジャーノを輸入して8年目ですが、こんな姿のパルミジャーノレッジャーノを見たのは初めてでした。辺り一面、こうしたチーズでいっぱいです。思わず、息を飲み込みました。見た瞬間、一体これはどうなってしまったんだろうかと全く想像できませんでした。本来の光沢のある黄金色の表面ではありません。つやが無く、全体にカビが広がり、ただれた様なくすんだ色の表面。そして、大きく深くえぐられた細長い穴が目のようで、まるでこちらを見つめているかのような異様さが漂っています。1個ならそうは感じませんが、この列の棚の全てが、下から天井近くまでほとんど全てがこうしたチーズなのです。こんなチーズにされた恨みで、ごろんと棚から転がり、頭の上に落ちてきそうな恐怖感がありました。
 

ハローウィンのお化けかぼちゃ? いいえ、ちょっと前まではパルミジャーノレッジャーノだったのです。何でこんな姿になっちゃったの? 可哀相になりました。



さらに奥へ進むと上の写真の様な元パルミジャーノレッジャーノの変わり果てた姿がありました。一体このパルミジャーノレッジャーノの工場では、一体どうなっているのでしょうか?と多くの疑問が沸いてきました。

表面を削りとられ、それで済まずそこから青カビや白いカビが出てきました。パルミジャーノレッジャーノと認められなかったので表面ぐるりを削り取られ、その後黒カビが生えてきました。



上の左の写真のパルミジャーノレッジャーノは、確か水平線が何本かが入っているので、セカンドクラスのパルミジャーノレッジャーノのはずですが、前回の4話であったセカンドクラスのパルミジャーノレッジャーノとは、全然様子が違います。どうしてこのように、表面をえぐらなきゃいけないのでしょうか? それに右の写真は、粉チーズ用に売られるもう何も名前がないチーズになってしまった元パルミジャーノレッジャーノですが、削り取られた表面に黒かびが発生して色が変わっています。この熟成庫は、どういう品質管理がされているのでしょうか? 皆さんはお分かりになりますか? 「このチーズマーケットが輸入するパルミジャーノレッジャーノの工場とこの低品質の工場とで、何がこれほどの品質の差を生んでいるのかを。」100個を作って、最終的にたった80個しか合格しないこの工場がある一方で、こうした不良品がまず出ないほぼ完璧な品質管理が出来たパルミジャーノレッジャーノのチーズ工場(チーズマーケットで輸入しています。)もあります。一口にパルミジャーノレッジャーノと言っても、どこ製のものを買うかで、その品質に大きな違いが出ていることがお分かり頂けたかと思います。それが分かるには、こうして買う前に現地の工場を取材することが重要なのです。自分で食べたいチーズだけをお客様にご提供できる様に、・・・・。残念ながら、この低品質のパルミジャーノレッジャーノは、東京のある輸入業者経由で日本に大量に出回っています。彼らは当然このような工場の現状を消費者に伝えることなく、ただ「パルミジャーノレッジャーノはチーズの王様。」だとか「歴史がある。」だとか「DOP認定のチーズだからおいしい。」なんて云って売っています。この工場の事実を知った私達はこうしたパルミジャーノレッジャーノを輸入することは出来ませんし、食べることは遠慮したいと思います。
  
最後にお口直しとして、チーズマーケットで輸入する素晴らしいパルミジャーノレッジャーノの写真を下に載せておきます。黒く見えるのは、パルミジャーノレッジャーノとして認定されたあの焼印です。どれも黄金色でいい艶をしています。もちろんえぐられたり、カビが生えていることはありませんね。

チーズマーケットのパルミジャーノレッジャーノ。モデナ産です。いい艶がありおいしそうです。





・第1話;「パルミジャーノレッジャーノの外形をぐるっと紹介します。」 へ戻る。


・第2話;「パルミジャーノレッジャーノの表面にあるスタンプや焼印 その1」 へ戻る。


・第3話;「パルミジャーノレッジャーノの表面にあるスタンプや焼印 その2」 へ戻る。


・第4話;「いろいろなパルミジャーノレッジャーノ。えっ? 」 へ戻る。

 

パルミジャーノレッジャーノになれなかったチーズの保管棚