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パルミジャーノレッジャーノの牛の品種



8回目の今日は、パルミジャーノレッジャーノになるミルクを出す牛達の品種のお話です。



パルミジャーノレッジャーノになるためにミルクを出す牛の品種は、「これに限る」という決まりはないそうです。下の左の写真は、日本でもおなじみのホルスタイン種で黒と白のぶちですが、その割合が違うとまったく別の品種のように見た目に違いがあります。また、右はまもなく出産予定のお母さん牛です。

パルミジャーノレッジャーノの牛であるホルスタイン種です。出産間近のお母さん牛。



チーズマーケットで輸入しているオーガニックのパルミジャーノレッジャーノの工場では、ミルクを他人任せにして買ってくるのではなく、自分達で愛情をかけて牛を育て、良質なミルクを生産することから始めています。さらにここでは、ホルスタイン種だけではなく、もう一つの品種も育てています。それが、左下の写真の茶色い方の牛です。ブラウンスイス種といいます。体の特徴は、右の写真のように鼻の周りがぐるりと白いのです。

ブランウンスイス種とホルスタイン種のパルミジャーノレッジャーノのミルクを出す牛たち。鼻の周りが白くてかわいらしいなぁー。



次の下の2枚の写真もご覧下さい。やはり鼻の周りが白くて、かわいらしいですね。では、どうして2種類の牛を飼っているかと申しますと、やはり乳質が品種で違うからです。ホルスタインと比べて乳糖やタンパク質(無脂乳固形分)の含有率が高いようです。そしてこのパルミジャーノレッジャーノの牧場では、ブランウンスイス種とホルスタイン種をほぼ半々に飼っています。つまりここのパルミジャーノレッジャーノは、ブラウンスイス種とホルスタイン種のミルクをほぼ半分ずつ合わせてチーズを作っているのです。(一般にパルミジャーノレッジャーノはホルスタイン種だけで作られることが多いようです。)

生まれて1ヶ月ほどのブラウンスイス種の子牛。牛の品種の区別なく、みな一緒に仲良く生活しています。


さて、話が変わります。下の写真をご覧下さい。これはフランスのモンドールとコンテのミルクを生産する酪農家のところでも見た血統表です。それぞれの子牛はどの母親と父親から生まれたのかが分かるようになっています。耳に付けるナンバリングのタグ番号と父と母の名前が書かれています。

全ての牛の血統一覧表です。



こうして生まれたばかりの子牛を見ると、さすがに耳にはまだタグは付いていませんね。こちらはブランウンスイス種の赤ちゃんです。白っぽい毛と茶色っぽい毛の2つがいました。人差し指を出すと乳首かと思いちゅーと吸ってくれます。最初は噛まれるかと思い怖かったのですが、本能で噛むのではなく吸うようになっているようです。

ブラウンスイス種の赤ちゃん牛とチーズマーケット店長の美奈子さん。ブラウンスイス種の赤ちゃん牛とチーズマーケット店長の美奈子さん。余りにもかわいくて興奮気味です。


(感想)「パルミジャーノレッジャーノになれなかったチーズの保管棚」の回でご紹介したあのひどいパルミジャーノレッジャーノの工場(a)でも、牛を育ててミルクを作るところからやっていました。しかし、チーズマーケットが薦めるここのパルミジャーノレッジャーノの牧場とは違う点がいくつももありました。こうした違いが両者のパルミジャーノレッジャーノの最終的な質の違いやおいしさの違いになっているのだと思いました。例を挙げますと、aでは、ホルスタイン種の牛だけでした。乳量が多いことがホルスタイン種にする大きな理由です。また、出産方法でも違いがありました。aでは、冷凍保存した精子を使って人口受精を行い、全ての牛がいつ出産するかの時期をコントロールして毎月子牛が一定数生まれるようにしています。その目的は、一年を通して一定の乳量を確保するためです。一方我らのパルミジャーノレッジャーノの牧場では、そういうことはしません。どの牛も自然のままなので、みな出産時期がほぼ同じ頃になります。私達が4月に訪問した春さきがその時期にあたるようです。でも、これは生産者にとっては困ることがあります。出産する牛が増えてくるとミルクを出してくれる牛が減ることになるので、牧場全体のミルク量は減ります。それは生産できるパルミジャーノレッジャーノの量が減ることを意味します。ここでは最高10個のパルミジャーノレッジャーノが作れる釜がありますが、取材した4月には、一日6個のパルミジャーノレッジャーノしか作っていませんでした。そして出産シーズンが終わるとミルクも徐々に増えていき、また8個・10個と作れるようになるのです。生き物相手の仕事なのに、ミルクの生産量をコントロールしようとすれば、失うものがあると私達は思います。生産者の最終的な目的やねらいは一体何なのか? 会わないと見えて来ません。「ミルクの生産量なのか、それともミルクの質なのか。」それは生産者それぞれで違います。その為にどのような牛をどれだけ飼い、どんな餌と牛舎で育てて行くかで変わってくるのです。(aでは、ある国のある大手チーズ輸入会社がお得意様なので、優先することは質ではなく量を確保することになりがちです。その結果、あのようなひどいパルミジャーノレッジャーノになるのだと感じました。)今回、この2つの牧場を取材することができて本当に良かったです。生産者の哲学がどうなのかを知っておくことが、責任と自信を持って売るためにとても大事だと感じています。




・第1話;「パルミジャーノレッジャーノの外形をぐるっと紹介します。」 


・第2話;「パルミジャーノレッジャーノの表面にあるスタンプや焼印 その1」


・第3話;「パルミジャーノレッジャーノの表面にあるスタンプや焼印 その2」


・第4話;「いろいろなパルミジャーノレッジャーノ。えっ? 」


・第5話;「パルミジャーノレッジャーノになれなかったチーズの保管棚 」


・第6話;「パルミジャーノレッジャーノの牛が食べるもの 」


・第7話;「パルミジャーノレッジャーノの牛の生活 」



パルミジャーノレッジャーノの牛の品種