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ローヴ・デ・ガリッグがハーブの香りがするわけ



ローヴ・デ・ガリッグの作り方を5回にわたってお伝えします。この6月(2005年)の取材で私はとても衝撃的な事実を知ることになりました。ここで皆さんにお詫びしなければなならいことがあります。それは、・・・「ローヴ・デ・ガリッグという名のやぎのチーズは、その表面にローズマリーが無いにもかかわらずローズマリーの香りがします。そのわけは、単にチーズにハーブエッセンスオイルを振りかけたからなのです。」これまで、ローヴ・デ・ガリッグについて、「ローズマリー(ハーブ)の香りがするのは、そのやぎが食べる餌がハーブなので、その香りがミルクに移り、それがチーズにも移ってハーブが匂うのです。」と説明してきました。ここの農場のやぎは、搾乳が終わると屋外に放たれ、ガリッグ地域と呼ばれるこの南フランスの大地に自生するハーブや草花を自分たちで食べているのは事実でした。(その他に畜舎では、人間が与える牧草や干草も食べています。)しかし、決して自生のローズマリーなどのハーブを食べたからといって、そのハーブの香りがチーズに移ったりはしないのです。本当に申し訳ありませんでした。今回のことで自分の不勉強を恥じました。これからは更に自分の足で歩き、自分の目で確かめたチーズ情報を現地フランスなどの生産者の声に耳を傾けて、真実を報告して参りたいと思います。そして、このようなことが二度と無いように全てのチーズについて見直します。本当に申し訳ありませんでした。それでは、今回の取材の詳細をご覧下さい。




ローヴ・デ・ガリッグのミルクは、すぐに大きなバケツに入れられます。

 

1.搾ったミルクが一時タンクに入る前にろ過されます。そしてすぐにこのパイプを通してやぎのミルクが壁から出てきます。(もちろん加熱殺菌をしないオ・レ・クリュ(生乳)です。)

ローヴ・デ・ガリッグの絞りたてのミルク

 

2.ミルクの流れが細くなった時を見計らって、ローヴ・デ・ガリッグになるやぎのミルクの味見をさせてもらいました。

ローヴ・デ・ガリッグのミルクを飲む美奈子店長。

 

3.香りを確かめますが、ローズマリー(ハーブ)の香りはしません。搾りたてで生ぬるいので余計に香りがするはずですが、ほとんどミルクの香り以外は匂いません。言われなければ、牛乳と間違えるぐらい差がない味わいです。

ローヴ・デ・ガリッグのカード。

 

4.こちらは、やぎのミルクにレンネットを加えて固まらせたカードです。これも味見をさせてもらいました。乳酸菌がたくさんあるのか、酸っぱいです。ヨーグルトがやや固まったぐらいの、絹ごし豆腐に似た柔らかさでした。しかし、これもハーブの香りはしませんでした。うーん、でも製品になったローヴ・デ・ガリッグは、確かにローズマリーの香りがするけれど、・・・。

ローヴ・デ・ガリッグのチーズをこねる機械です。

 

5.そして、これがカードの水分を切って固めたものをよくかき混ぜる機械でした。この機械のチーズの部分に鼻を近づけるまでもなく、ここからハーブ(ローズマリー)の強い香りがしてきました。これは、一体どういうことなのか? 頭がぐるぐる回ります。



そうなんです。この時点でローヴ・デ・ガリッグのチーズにローズマリーなどのハーブのエッセンスオイルを加えていたのでした。下の赤○がその小瓶です。小瓶を拡大した写真が下にあります。

ローヴ・デ・ガリッグのチーズ工場で見かけたハーブのエッセンスボトル。

ローヴ・デ・ガリッグの注文がこのチーズ工房にくると、その顧客のリクエストによって、数種類のハーブエッセンスを使い分けているそうです。これがローヴ・デ・ガリッグがハーブの香りがする理由なのです。

ローヴ・デ・ガリッグに加えられるハーブのエッセンスオイルのボトル。


ではどうして、今まで間違えていたことに気が付かなかったのか? 私がローヴ・デ・ガリッグというチーズを知ったのは、今から7年前の正にチーズマーケットを創めた年でした。ある札幌のレストランさんが東京から買ったチーズなんだけどと言って、このチーズを見せてくれました。その時にその方が、「ローズマリーの餌を食べているから、チーズにもその香りがするんだよ。」と説明してくれました。そしてそれから3年後に、自分達でローヴ・デ・ガリッグを輸入するようになりました。販売するにあたり、当時日本にある本や雑誌、ネット情報などで調べました。するとやはりその方の話と同じようなことが載っていました。そして、私達はそれを鵜呑みにしてしまい、現地に確認をしないままに、こうした説明をしていたのでした。まさかエッセンスオイルだとは思いませんでした。これからは、全ての疑問点を海外の生産者に尋ねて、確かな情報を皆様にお伝えしていこうと思いました。今回のことは、とても深く反省致しました。本当に申し訳ありませんでした。

最後に生産者とこのローヴ・デ・ガリッグのチーズについてです。彼らが偽ってこのようなローヴ・デ・ガリッグを作っているわけではありません。また、このチーズ自体とてもすばらしいやぎのチーズだと私は思います。何といいましてもやぎが育つ環境とえさ、そしてそこ結果出来るミルクの質が高いからです。また、どうしてこのような誤った情報が日本で広まってしまったのかは今の私には分かりませんが、当初からローヴ・デ・ガリッグの生産者の方達は、このやり方てやって来られたようです。それを日本に限らずフランス国内に対しても製造・販売をしています。ローヴ・デ・ガリッグのやぎは、自生のローズマリーなどのハーブを食べています。しかし、残念ながらそのチーズの香りは、ローズマリーのエッセンスに由来していたのです。



・第1話;「ローヴ・デ・ガリッグは、日本の団子やおにぎりのようなやぎのチーズだった。」

・第2話;「ローヴ・デ・ガリッグの作り方1」



ローヴ・デ・ガリッグがハーブの香りがするわけ